『ヒトはなぜ絵を描くのか』

『ヒトはなぜ絵を描くのか』著者:斎藤亜矢

面白かった。

絵を描く行為は文字の発明に近い。

そして線から”何か”をイメージする力は、物語性を生み出す「想像力」と似ており、想像力は記憶の効率化に貢献する。

子供が絵を描くことが好きなのは、この「物語性」を獲得する練習なのかもしれない。

また、描くことの面白さは「環境のアフォーダンスを受け、そこから物語を紡ぎ概念化、記憶に結び付ける」という工程を進んで経験するためのモチベーションになっているのかもしれない。
アートは既存の概念を壊すことに魅力がある部分もあるが、今後は物語の流れでずらしたアートが出てくるのかもしれない。

ここでの「面白さ」とお笑いや実際の物語などの面白さとの共通点なんかも気になる。


あと、本の内容とはあまり関係ないかもしれないけど、著者が子供のころ「考え事を一度にいくつできるか?」という疑問がわき、実際に挑戦していたそうだ。

子供のころのこういう原体験みたいなのって、面白いよね。


統計「思い過ごしの世界」


客観的なデータを見ることで、自分達が見ている(生きている)世界がいかに不正確で、人はそれぞれ自身が持っている「思い過ごしの世界」に生きてるってことがよく分かる。
以前、記憶と感情について書いたけど、「思い過ごしの世界」ってのは、脳のシステムとしては当然な事なのかもしれないね。

それを覗き見れるのが統計の面白さ。

人工知能

人工知能は「身体がない」という決定的要素を変えなければ人間には近づかない。
身体を持ち、環境のアフォーダンスや制限を受けてこそ生まれるものもあるからだ。

あと、自我と全体のバランスも大事。
これに関しては人間もどういうシステムなのかわからんけど。

ていうか、そもそも人間とは違う方向に進めていく感じなのかな?

もし、人工知能が自立して独自に生態系を築いた場合、なんか原始的な世界になりそうな気がする。アメーバとかカビみたいな。

人間はいびつだから面白いんだけどね。生物として洗練されると、いずれ収束していきそう。乱数とかは実装するのかな?



心を生み出すシステム

基本的に人間に自由意志などは無く、一般的にいうところの”心”というものも存在していないというスタンスでいるんだけど、皆が”心”と言っている”何かしら”はあるので、それが何なのかをちょっと考えてみたい。

そもそも”心”って何を指すのだろう?

ちんたら書くのもアレなので、独断と偏見で「感情」と「物語性」だと決める。
で、この「感情」や「物語性」にはきちんとシステムとしての役割がある。

まず「感情」だけど、これは物事の「正否」を決めるためのフィルターみたいなものだと考える。
何かを選択するときや、対象を好意的に記録するか否定的に記録するかなど。
また、その決定が確実ではなく、ある種のランダム性を持っているという点が重要だ。

人間というのは「こうなれば必ずこうなる」といった機械的な決定をしないものだ。

「ある条件を満たせば必ずこうなる」という状態に、不確実な”ゆらぎ”を付け加えて、全体としての選択が一方向にまとまらない(収束しない)ように働く、それが感情の役割だと思う。

例えば「みんなが○と言っているし自分もそうしよう」や、逆に「みんな○だから自分は×にしよう」というのは、感情のフィルターを通した結果を受けて判断を決定しているといえる。※保留もある
判断以外にも、認知のプロセスには全て感情のフィルターがかかっており、情報が意識に上る前から感情による取捨選択が行われているそうだ。

もともと脳ではニューロンのスパイクに対してシナプスが神経伝達物質を放出する際、放出が行われるかどうかは確率で決まる。
それと同じ不確定性が脳細胞から人間のスケールに変えても保存されており、その不確定性を作るためのシステムが感情なのではないかと思ってる。


さて、もう一つの「物語性」だけど、これは記憶のためのシステムではないかなと考えてる。
よく記憶術なんかで「ストーリー立てて覚えれば覚えやすい」とかあるけど、そもそも人間の記憶のほとんどは物語で覚えているのではないだろうか?(リズムに乗せて覚えたり)
※正確にいうと物語性というより”関連性”かな?

絵を描いているとよくわかるけど、人の顔や物の形など、人間は驚くほど記憶していない。漢字なんかは特に分かりやすい。読めるけど書けないってやつだ。
この場合、漢字の細部の記憶はあいまいで、前後の文面や全体の印象で「これは確か○○だな」と気づく。すごいのは細部が少し違っていても意外と気づくところだ。
※体が覚えているってのもあるけど、とりあえずそれは置いておく

画像データで喩えるとビットマップ形式で覚えているのではなく、ベクター形式で覚えている感じかな。細部の表現は難しいけど、大体の形を少ないデータで保存できる。

「感情」と「物語性」と「記憶」は相互に関連しており、それぞれを互いに強化しあっているように感じる。※時間の概念も生まれるね

また、実際の世界には、認知できないレベル(あるいはしきれない)のノイズのような情報があるが、感情や物語性には、このノイズを程よく除去する作用もあるのではないかな。自然さを出すためにはノイズは必要なので、脳内で改めて付け加えるのだろう。

結論を言うと『ある複合体の中で、個体としての振る舞いを決定するためのシステムを”心”と呼んでいる』って感じ。

誰かこの辺を研究している人いないのかなぁ。。